駐車場の乗り降りで不便や不安を感じたことはありませんか?
「スペースが狭くて車いすが出しにくい」
「雨の日は濡れてしまい、移動が大変」
「玄関までの通路に段差や傾斜があって使いにくい」
こうした小さな不便に負担を感じ、外出が億劫になってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
駐車場のバリアフリーというと、「広くする」「段差をなくす」といった対策を思い浮かべがちですが、それだけでは本当に使いやすい環境にはなりません。
大切なのは、車を降りてから玄関に入るまでの一連の動線を考えることです。
今回は、車いすでも安心して使える駐車場づくりのポイントを、通路、スペース、設備の考え方を交えながら、わかりやすく解説します。
これからリフォームを検討している方や、使いにくさを感じている方は、ぜひ参考にしてください。
駐車場のバリアフリーは「動線」から考えるのがポイント
駐車場のバリアフリーを考える時、「スペースを広くする」「段差をなくす」といった対策に目を向けてしまいがちではないでしょうか。
しかし実際には、住宅のスペースには限りがあり、無制限に広げることは難しい現状があります。
こうした制限の中で、バリアフリーを考える際に最も重要なのが「動線設計」です。
車いすでの移動は、単純に「車を止める→降りる」だけでは終わりません。
ドアを開ける、車いすに乗ったままスロープなどで降りる、あるいは車いすを出して乗り移る、方向を変える、玄関まで移動する。
こうした一連の流れがスムーズにつながって初めて、使いやすい環境になります。
まずは実際に、どのように車を降りて、どのルートで家の中に入れるのかを具体的にイメージしましょう。
例えば、通路の取り方を工夫し、最短で家の中に入れるようにすれば、その分、駐車場を広くできるかもしれません。
車から降りて、玄関に入るまでの一連の流れの中で、どこに負担や不便があるのかを整理することが、無駄のないバリアフリー化へとつながる第一歩です。
窓を第二の玄関に。駐車場からリビングに最短で入れる動線設計の施工事例
画像は、駐車場横にあるリビングのドアを、第二の玄関として活用し、駐車場からリビングまで最短で入れるように動線を見直した施工事例です。
従来は玄関を経由して室内に入る必要がありましたが、玄関までの高低差が大きく、出入りが難しい状況でした。
そこで、駐車場横のリビングの掃き出し窓を、「もう一つの出入口」として設定し、「車を降りる→そのまま室内に入る」というシンプルな動線を実現しました。
リビングの窓には、外側からでも施錠・開錠ができるように新たに鍵を設置し、防犯面にも配慮しています。
また、駐車場とリビング間には高さの違いがあるため、段差解消機を設置しました。
これにより、リビングの高さまで電動でスムーズに昇降できるようになり、車いすでも無理なく出入りが可能になりました。

1階を玄関化。駐車場直結のエレベーターホールで移動負担を軽減した施工事例

1F屋外からみた、ホームエレベーター/エレベータホールの入口(右から)
画像は、1階が駐車場、2階がお住まいになっている家の施工事例です。
もともとの玄関は、外階段を上った先にありましたが、車いすを使用した生活となったことで、階段の昇降が難しくなり、「自宅に入れない」という課題が生じていました。
当初は1階に新たに生活環境を整える案も検討しましたが、工事費用がおおきくなるため、ホームエレベーターを設置して上下階を移動する方法をご提案しました。
1階には新たにエレベーターホールを設け、その空間を玄関として機能させることで駐車場から直接アクセスできる動線を確保しています。
また、道路からエレベーターホールまでのアプローチについても見直し、砂利だった通路をコンクリートで舗装して、スロープを設置しています。
段差や不安定さを解消することで、より安全でスムーズな移動ができる環境を整えました。

駐車場から玄関までの通路をバリアフリーに整える
駐車場で車から降りることができても、玄関までたどり着けなければ、家に入ることができません。
そのため、まずは駐車場から玄関までの動線を見直しましょう。
通路は、段差がないことが基本です。
段差がある場合は、スロープや段差解消機などを設置し、床面をフラットに整えることで、無理のない移動経路を確保します。
玄関までの高低差が大きく、スロープや段差解消機での対応が難しい場合は、玄関以外の出入口から、車いすの出入りをすることも検討が必要です。
通路の幅も重要なポイントです。
車いすで余裕をもって通行するためには、通行幅120cm以上を確保するのが理想とされています。
最低でも出入口部分は80cm以上確保することで、スムーズな出入りがしやすくなります。
(以下、【参考】車いすを使用する場合の通路幅の目安(国土交通省 基本寸法より抜粋)をご覧ください)
また、見落としがちなのが、床材の選び方です。
屋外の通路は雨や雪で濡れたり、落ち葉が溜まったりします。そのため、滑りにくさと掃除しやすさの両立が必要です。
例えば、コンクリートは掃き引き仕上げにすることで、滑りにくく安全性を高めることができます。
【参考】車いすを使用する場合の通路幅の目安(国土交通省 基本寸法より抜粋)
| 寸法 | 意味 | |
|---|---|---|
| 80cm | 車いすで通過できる寸法 | |
| 90cm | 車いすで通過しやすい寸法 通路を車いすで通行できる寸法 |
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| 120cm | 通路を車椅子で通行しやすい寸法 人が横向きになれば車椅子使用者とすれ違える寸法 杖使用者が円滑に通過できる寸法 |
|
| 140cm | 車椅子使用者が転回(180度方向転換)できる寸法 杖使用者が円滑に上下できる階段幅の寸法 |
|
| 150cm | 車椅子使用者が回転できる寸法 人と車椅子使用者がすれ違える寸法 |
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| 180cm | 車椅子使用者が回転しやすい寸法 車椅子使用者同士がすれ違える寸法 |
|



駐車場から門扉・ポストまでの動線も見直す

(三協アルミ スライド門扉 レナードより引用 https://alumi.st-grp.co.jp/products/gate/gatedoor_slide/renard/detail1.html)

(三協アルミ スライド門扉 レナードより引用 https://alumi.st-grp.co.jp/products/gate/gatedoor_slide/renard/detail1.html)

(三協アルミ スライド門扉 レナードより引用 https://alumi.st-grp.co.jp/products/gate/gatedoor_slide/renard/detail1.html)
駐車場から門扉までも、スロープや段差解消機などを活用しながら床面をフラットにして、無理のない移動経路を整えます。
門扉はスライド式がおすすめです。
一般的な内開きの門扉と比べ、開くときに手が届きやすく、ラクに開閉することができます。
錠前位置が操作しやすい高さであることもポイントです。車いす使用者本人が門扉を開閉することが想定される場合は、あらかじめ錠前が手の届きやすい位置であることを確認しておきましょう。

LIXIL 機能門柱FKより引用(https://www.lixil.co.jp/lineup/gate_fence/function-fk/)
また、ポストの高さやサイズも重要です。
一般的なポストの高さは120~130cmです。車いすを利用する場合は、もう少し下げて、手が自然に届きやすい位置を確保します。
ネットショッピングを頻繁に利用する場合は、容量の多いものを選ぶと便利です。

インターフォンは「親機(室内用)」と「子機(屋外用)」の2つがあり、それぞれに適した設置場所を押さえることが、使いやすさと安全性につながります。

親機は室内の壁に取り付ける操作パネルです。
誤操作を防ぐため、周囲20cm四方ほどのスペースを開けて設置します。高さは使用する人によって使いやすい位置がことなりますが、目線の高さに合わせるのが基本です。
座って親機を使用することが想定される場合は、90~120cm程度の高さが推奨されています。

屋外に設置する子機は、防犯性にも関わる重要な設備です。
子機の高さを間違えると、訪問者の顔が映らずに「この家は顔を映さずにすむ」と思われ、防犯性が下がる可能性があります。
そのため、顔がきちんと映る高さと、ボタンが押しやすい高さを両立させる必要があります。
一般的には床から145cm程度が標準ですが、車いす使用者が訪ねてくることが想定される場合は、もう少し下げて90~120cmにしておくと顔がよく映ります。
来客の立ち位置が予測できない場合は、広角カメラを搭載したインターフォンを選ぶと、死角を減らし、防犯性を高めることができます。
また、ポストやインターフォンは設置する高さだけでなく、場所も重要です。
住人と訪問者を間接的につなぐ機能を持っているだけでなく、「ここから先は許可なく入ってはいけない」という意思表示にもなります。
玄関ドア脇に設置すると、アプローチしやすく使いやすい利点がありますが、悪質業者や訪問販売員なども敷地内に招き入れてしまいます。
玄関ドアとは別に門扉がある場合は、門扉の方に設置することも選択肢のひとつです。
車いすでも安心して使える駐車スペースの確保

車いすを利用して乗り降りする場合、スペースが狭いと介助の負担が大きくなったり、スムーズに移動するのが難しくなったりします。
車に乗り込む場合には、「車と床の段差」という大きなハードルがあります。
この段差をどう乗り越えるかというのは、あらかじめ検討しておく必要があるでしょう。
車のドアから乗り降りする場合と、車の後部から乗り降りする場合とでは、乗降スペースの確保の仕方が変わります。


また、介助者がいる場合は、どうやって介助するかの想定も必要です。
たとえば介助者が人力で持ち上げて乗り降りをサポートする場合は、車いすのスペースと介助者が乗車をサポートするスペースの確保が必要になります。
あるいは、折りたたみ式のスロープを用意して、車いすで乗り降りする場合は、スロープをかける分のスペースが必要です。
国土交通省が発表している「車椅子使用者用駐車施設(ハード)に関する基準及び実態調査結果について」には、車いす使用者が安全に乗降できるよう、車いす使用者用の駐車施設では、車いす利用者の乗降スペースを確保することを鑑みて、幅は3500mm以上とすることが基準とされています。
もちろん、個人宅でその広さを確保するのは難しいかもしれません。
しかし、限られたスペースのどこに余白をとるか、どこに動線を確保するかを考えることで、実用的な乗降スペースを作ることは十分に可能です。
たとえば、片側に広い余白を設けることで、車いすが安全に横付けできるスペースを作る、あるいはカーポートの柱の位置を工夫してドアの開閉を邪魔しないようにするなど、ちょっとした設計の工夫が大きな違いを生みます。
雨や暑さから守る屋根の配置(カーポート・オーニング)

三協アルミ ウェルハート より

三協アルミ カフェリオより引用(https://alumi.st-grp.co.jp/products/deck/awning/caferio/detail1.html)
車いすや杖を使う方にとって、屋外での車の乗り降りは天候の影響を受けやすく、負担の大きい動作です。
国土交通省が発表している「車椅子使用者用駐車施設(ハード)に関する基準及び実態調査結果について」には、「屋外の駐車施設に屋根もしくは庇を設けることが望ましい」とされています。
このガイドラインは公共空間を想定したものではありますが、個人宅でもその考え方は非常に重要です。
カーポートやオーニングを採用し、雨や雪から保護を考えてみてはいかがでしょうか。
悪天候の日でも、乗り降りの際に濡れにくくなり、冬場には積もった車の雪下ろしや、凍結した通路での滑りのリスクを低減することができます。
設置にあたっては、単に車を覆うだけではなく、人が乗り降りするスペースまでしっかりカバーできるサイズと形状を選んでください。
せっかくカーポートやオーニングを設けても、ドアを開けたら雨がふきこんできたり、車いすを展開するスペースが屋根の外では意味がありません。
乗降の動線や玄関までのアクセスを考慮した設計が必要です。
柱の位置にも注意が必要です。
車いすでの移動やドアの開閉の邪魔にならないように、確認しておく必要があります。
土地によっては、風に強いものや雪に耐えられる強度を選ぶことで、より安心して長く使うことができます。

駐車する車両の高さも、チェックしておきましょう。
通常の車であればスタンダードなカーポートやオーニングで対応できますが、大型車いす用リフト付き福祉車両(車両高さ230cm)など、専用の車両を利用する場合は、製品によっては高さが対応していないので注意が必要です。
カーポートは、雨や風、雪に強く、安定して利用できる反面、オーニングと比べて高額になります。
オーニングは、安価で導入できますが、風や雪に弱く、地域によっては使用が難しい場合があります。
使用環境によって、製品を選ぶと長く安心して使用できます。
出入りをスムーズにする電動門扉の活用

アクトテクニカ株式会社 大型スライド式電動門扉・装飾門扉より引用(https://www.acttechnica.co.jp/car-park/slide-gate/)
駐車場の門扉の開閉は、車いすの動線が複雑になり、見えづらい負担になりがちです。
電動門扉を導入すれば、ボタン一つで門の開閉ができるため、移動や動作の回数を大幅に減らすことができます。
開閉だけでなく施錠もセットで遠隔操作ができる製品を登場しており、スマートフォンやリモコンを使って、その場で施錠・開錠、門扉の開閉の流れを済ませられるようになりました。
また、条件が合うならば、地面にレールのないタイプの電動門扉をおすすめします。
従来のスライド式門扉では、地面にレールがあるため、車いすの車輪が引っ掛かることがありました。
その点、レールのない形式の電動門扉を選べば、よりスムーズで安全に出入りが可能になります。
【番外】道路に車を出して、車いすで乗り降りする場合

道路に車を出して、車いすで乗り降りを行う場合は、周囲の環境に十分な配慮が必要です。
まず注意したいのが、道路の傾斜です。
路面に傾きがあると、車いすが意図せず動いてしまったり、乗り降りの際にバランスを崩す原因になります。
できるだけ平坦な道を選び、安定した状態で乗り降りができる環境を確保することが大切です。
交通量にも注意が必要です。
車の通行が多い道路では、乗り降りの最中に危険が伴うため、できるだけ交通量の少ない場所や時間帯を選ぶなど、安全への配慮が求められます。
また、縁石や段差の有無も確認しておきましょう。
安定して乗り降りできる場所を確保できても、スムーズに移動できなければ、車に乗り込めません。
車いすでの移動にはわずかな段差でも大きな障害となるため、安全に歩道へ移動できるかどうかも重要なポイントです。
【番外】施設の場合は案内表示も重要

店舗・施設に車いす用駐車場を設ける場合は、場所を用意するだけでなく、誰でも迷わず利用できる案内表示の整備が重要です。
- 駐車場の付近には、車いす用駐車場があることを表示する標識を設ける
- 標識は、高齢者、障害者等の見やすい位置に設ける
- 表示板はピクトグラムなど、車いす用駐車場だとわかるもの(JIS Z 8210)にする
- 駐車場の進入口には、車いす用駐車場があることがわかるように表示する
- 駐車場の進入口から車いす用駐車場まで、誘導用の表示をする

また、車いす用駐車場の場所にも、わかりやすい表示が必要です。
- 車いす用駐車場には表示板や、路面に国際シンボルマークを見やすい方法で表示する
- 車いす用駐車場の乗降用スペースには、路面に塗装するなど、識別しやすいようにする
駐車場のバリアフリーは、「動線」を見直すことから始まります。
毎日の移動が少しラクになるように、玄関から駐車場までを見回してみてはいかがでしょうか。
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